白黒写真は簡単で奥が深い。
フィルムの時代は自分で現像したものだった。カラーフィルムに比べて温度管理に気を遣わなくてよかったり。
デジタルになってからは、レタッチするときに白黒にできたりする。
本来の白黒とはちょっと遠ざかってしまうだろうか、それも白黒で楽しい。
最近は、カラーディスプレイだらけなので、本当の白黒かと言われれば難しい。
それはフィルム時代でも同じことが言われた。
フロンティアなどで白黒フィルムっぽくできたけれど、それはカラーの印画紙に白黒っぽく焼き付けたもの。
白黒の印画紙のそれとは、コントラストや階調の奥行きが違った。
「光の三原色」と言うように、色を表すときは3種類の光で表現することが多い。赤・緑・青、つまりRGBということ。
どうしても3つの色を使用しなければいけないので、解像度が甘くなってしまう。
テレビ局のカメラマンが担ぐようなビデオカメラのファインダーは解像度を求めていたので、つい最近まで白黒ファインダーだったのだ。
色の要素が無くなり、解像度があがる。
それは、人の目に与える印象も変わってくる。
濃淡でしか表すことのできない白黒写真。どれだけカラフルな色をしていても、どれだけ鮮やかな色をしていても、それを白黒に残しておくのは難しい。至って平凡な写真になってしまう。
逆に、その色情報が無くなったことで、本来の輪郭が映えるようになり、テクスチャ感がリアルに伝わる。
要素を削ぎ落とすことは美しい。
白と黒の色だけに注意すればいい、白黒フィルムは美しい。
ライブ会場で撮影していたときは、ネオパンスーパープレスト1600を2段増感して使っていたけれど、充分に満足のいく仕上がりだった。
それをデジタルカメラで表現しようと思うと。
どうしても滑らかな階調を表現することは難しい。それはカラー情報を無理矢理捨てた白黒にしかならないから。
白黒しか写らないデジカメなら。もっとリアルで奥行きのある写真を撮ることができるだろう。
残念ながらどれだけ美しく仕上げても、ディスプレイがそれに追いついていないときもある。
ときに医療用のそれは、カラー情報を無くし、モノクロ液晶ディスプレイとして売られている。
デジタルの手軽さが、アナログの滑らかさに負けた瞬間だろう。
色が無い表現というのは、実に面白い。
濃淡だけで、どれだけ相手に伝えることができるのか。
どうやったらその場の空気を映し出すことができるのか。
見た目が華やかで綺麗だ。というカラー特有の手抜きはできなくなる。
どこかしら眠たい写真、コントラストの調整を失敗すると、眠たい写真に仕上がる。
それ自体が表現のときもあるが、白黒写真では顕著に表れることがある気がしている。
色の概念をとっぱらって、いつもの風景を眺めているのもいい。
どれだけ色に左右されていたのか。
そもそも色ってなんだろうか。
残念ながら、ここに掲載している写真は、全てデジタル処理だ。
通常のデジカメで撮った写真を、白黒に加工してある”だけ”の写真だ。
少しばかり白黒を体験することはできるけど。こんな甘い物じゃない。
一度、白黒フィルムを体験してみると、その面白さが分かる。白黒フィルムの使い捨てカメラもあるくらいだから、ハードルはうんと低い。
デジタル処理よりアナログのそれを感じてほしい。
できることなら、白黒フィルムの現像時に、白黒の印画紙でプリントしてほしいもの。
24枚、36枚のプリント代がかさむということであれば、ネガと同じサイズのコンタクトプリントというのもオススメだ。